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行政書士と中小企業診断士のAI活用:補助金調査をjGrantsに接続して出典付きで返す設計

AI導入

行政書士と中小企業診断士のAI活用:補助金調査をjGrantsに接続して出典付きで返す設計

補助金調査で任せられる部分と、任せると危ない部分

行政書士や中小企業診断士が補助金の相談を受けると、調査には二つの工程が混ざる。 募集中の制度から用途と地域の合うものを集めて補助率と上限額と締切を並べる工程と、その要件を顧問先に当てはめて申請に値するかを見極める工程だ。

生成AIが補助に入れるのは前者に限られる。 そして前者であっても、AIが返した制度名と締切をそのまま顧問先に伝えると危ない。

汎用の生成AIに補助金を尋ねたときに起きること

生成AIは、学習した文章の続きとしてもっともらしい文を作る仕組みであり、募集中の公募を照会する仕組みではない。 一方で補助金の多くは回次ごとに公募が切り替わり、後述の検索で返った制度名にも「16次公募」「令和8年度第2回」と回次が入っていた。

学習時点の知識から答える生成AIは、前の回の締切や上限額を、今の回の値として返すことがある。 回答の形式は整っているため、回次のずれは文面から見分けにくい。 対策は、AIが参照できる先を、募集の現在の状態を返す情報源に固定することにある。

参照先をjGrantsに固定する

デジタル庁が運用する補助金の電子申請システム「jGrants」には、公開APIがある。 仕様はdevelopers.digital.go.jpで公開されており、入口は二つに分かれる。

  • 一覧の取得:検索語(2文字以上)、並び順、募集期間内に絞るかを指定し、利用目的、業種、従業員数、補助対象地域でも絞り込める
  • 詳細の取得:補助金IDを指定すると、補助率、補助額上限、概要、募集期間、申請受付の有無、公式の詳細ページのURL、公募要領などの添付ファイルが返る

2026-10-08時点では、認証情報を付けずに呼び出して結果が返った。

ここでいう補助金MCPとは、AIを外部のデータソースへ接続する取り決めであるMCP(Model Context Protocol)を使い、参照先をこのAPIに限定して答えさせる設計を指す。 デジタル庁も、jGrants用のMCPサーバーのソースコードをGitHubで公開している。

候補ごとに補助金IDと公式の詳細ページが付くため、今も掲載されているかをその場で確かめられる。

実務での使い方

以下は2026-10-08に公開APIを呼び出した結果であり、募集の状況が変われば結果も変わる。

用途の語で候補を集める

デジタル化の相談を想定し、募集中に絞って検索した。 「AI」では2件が返り、倉敷市の実証実験サポート事業と、データセンターの脱炭素化設備の導入支援事業だった。 どちらも制度名に「AI」は無く概要の文中にその語があり、中小企業がAIツールを導入するための制度ではない。

「デジタル」では15件が返り、東京都や久留米市のデジタル化の補助金のほか、医療機関向けの事業や助成金の状況報告の手続きのページも並んだ。 短い語を替えて何度か引き、人が一覧を絞る工程は残る。

詳細を引いて、補助率と締切を確かめる

東京都の中小企業デジタル導入促進補助事業の詳細を引くと、補助率は「助成対象経費の2分の1以内」で、小規模企業者などの申請では3分の2以内とする条件が付いていた。 上限額は150万円、受付の終了は日本時間で2027年1月29日23時59分である。 APIの日時は協定世界時で返るため、日本時間に直して読む。

概要の欄は詳細を東京都中小企業振興公社の募集要項に委ねており、添付ファイルの欄は空だったため、細部は募集要項の原文で確かめる。

県と全国を分けて引く

千葉県の顧問先を想定し、「省力化」を補助対象地域「千葉県」で絞ると、募集中は0件だった。 地域を指定しないと8件が返り、うち7件は補助対象地域が「全国」の事業承継・M&A補助金(16次公募)の各枠だった。 地域に「全国」を指定するとその7件が返った。

この時点では県で絞ると「全国」を対象とする制度が外れたため、県と全国を別々に引いて合わせないと、全国の制度が候補から漏れる。

この設計で埋まらない範囲

検索の対象は、jGrantsに掲載された制度に限られる。 「該当なし」を「使える制度が無い」と読むわけにはいかず、自治体の独自制度は自治体のサイトで確かめる。

jGrantsに載っていることと、jGrantsで申請できることも別である。 倉敷市の実証実験サポート事業は申請受付の有無の欄が「無」で、概要にも「Jグランツで本補助金の申請受付を行っておりません」とあった。

APIは、顧問先が要件を満たすかの判定を返さない。 申請書類の作成も、この設計の外にある。 行政書士法は、他人の依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類などを作成することを行政書士の業務とし(第1条の3)、行政書士や行政書士法人でない者が業としてこれを行うことを、ただし書きの場合を除いて制限している(第19条、e-Gov法令検索)。 どの制度に申請し、書類に何を書くかは資格者と事業者が決める。 この設計が短くするのは集める時間であって、見極める責任ではない。

小さく試す手順

  1. 直近の補助金の相談を1件選び、手作業で集めた候補の一覧を手元に置く
  2. 同じ条件で、用途を表す短い語を数個と、県と全国に分けた地域指定でjGrantsを引く
  3. 拾えた制度と拾えなかった制度を突き合わせる
  4. 拾えなかった制度が、jGrantsに未掲載のものか、検索語や地域指定の問題かを切り分ける

4まで済ませて初めて、どの相談をこの設計に載せられるかが決まる。

経営者の方へ

補助金を自分で探す場合も、県と全国を分けて短い語で引く手順はそのまま使える。 どの業務からデジタル化するかを整理したい場合は、DX成熟度かんたん診断で現状を点検できる。 顧問の事務所で使う場合の進め方は、士業事務所のAI導入にまとめている。

よくある質問

Q: AIが返した補助金の締切を、そのまま顧問先に伝えてよいですか?

jGrantsに固定した設計でも、伝える前に公式の詳細ページと募集要項で確かめる工程は残す。 締切がその回のものであることと、顧問先がその回の要件を満たすことは別の話だからだ。

Q: jGrantsで「該当なし」なら、使える補助金は無いと考えてよいですか?

そうは読めない。 掲載分しか検索できず、地域の指定でも結果が変わるため、県と全国に分けた検索と自治体のサイトの確認をあわせて行う。

Q: 導入にどの程度の準備が要りますか?

直近の相談を1件選べば、従来の調査結果との突き合わせから始められる。


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