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AI導入

会計事務所のAI活用:EDINETに接続して有報の財務指標を出典付きで取る設計

2026-09-11
会計事務所のAI活用:EDINETに接続して有報の財務指標を出典付きで取る設計

企業調査で任せられる部分と、任せると危ない部分

顧問先を取り巻く数字を調べる作業には、集めるだけの工程と、読む工程がある。 同業他社の売上規模を並べる、対象会社の自己資本比率の推移を出す、従業員一人あたりの利益を計算する。 ここまでは手順が決まっており、時間だけがかかる。

読む工程は違う。 その数字が業種のなかで高いのか低いのか、会計方針の違いによる見かけの差ではないか、という判断が入る。

生成AIを入れられるのは前者に限られる。 そして前者であっても、AIが返した数値をそのまま資料に載せると危ない

汎用の生成AIに財務数値を尋ねたときに起きること

生成AIは、学習した文章の続きとして数字の列を作る。 決算短信を照合する仕組みは持っていない。

そのため、年度がひとつずれた数値、連結と単体を取り違えた数値、桁の違う数値が返る。 返ってくる形式は正しいため、単位と年度が揃って見える表を前にすると誤りに気付きにくい。

顧問先への説明資料や与信の判断材料にこれが混じると、修正は資料の差し替えでは済まなくなる。 対策は、AIが参照できる先を、原本まで辿れる情報源に固定することにある。

参照先をEDINETに固定する

金融庁のEDINETは、有価証券報告書をはじめとする開示書類の電子開示システムであり、書類検索と財務データの取得にAPIが公開されている。

EDINET MCPとは、AIが参照できるデータソースをこのEDINETに限定し、その範囲で回答させる設計を指す。

取得の入口は三つに分かれる。

  • 企業の特定:EDINETコードリスト(約11,000社)から、企業名や証券コードでEDINETコード、業種、決算日を引く。APIキーは要らない
  • 書類の特定:提出日と書類種別で開示書類を検索し、docID を得る。有価証券報告書は書類種別コード120にあたる
  • 財務指標の取得:docID を指定し、有報の「主要な経営指標等の推移」から売上高、経常利益、当期純利益、純資産、総資産、自己資本比率、ROE、営業キャッシュフロー、従業員数を取り出す

回答に docID が付くため、EDINETの開示書類検索( https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/ )で原本を開いて確かめられる。 数値が架空である余地は、この時点で塞がれる。

実務での使い方

顧問先を同業のなかに置く

顧問先と同じ業種の上場企業を数社選び、自己資本比率と営業キャッシュフローの推移を並べる。 顧問先の数字そのものは非公開でも、比較の物差しは公開情報から作れる。

与信とM&Aの一次調査

対象会社が上場していれば、直近数期の推移を一次ソースから短時間で押さえられる。 決算日から約3か月後が提出時期にあたるため、3月決算なら6月下旬の提出日を狙って書類を探す。

説明資料に一次ソースの数字を使う

出典が docID で残るため、資料に「金融庁EDINET提出の有価証券報告書による」と書ける。 数字の出どころを聞かれたときに、原本を開いて示せる状態を保てる。

この設計で埋まらない範囲

参照先を固定しても、次の四点は残る。

EDINETに載るのは開示義務のある会社に限られる。 中小企業や非上場会社の数字は、この設計では取れない。 顧問先そのものの調査ではなく、比較対象を作る用途に向くのはこのためだ。

会計基準の違いは数字の横並びを壊す。 日本基準、IFRS、米国基準では項目の定義が揃わないため、同じ名前の指標を並べても比較にならない場合がある。

有価証券報告書は年に一度の書類であり、速報性はない。 直近の動きが要るなら、決算短信を別に見る。 四半期報告書は2024年4月の制度改正で第1・第3四半期分が廃止され、決算短信に一本化された(半期報告書はEDINETに残る)。

そして、並んだ数字が何を意味するかは、この設計の外にある。 短くなるのは集める時間であって、読む責任ではない。

小さく試す手順

比較対象を作る場面から始めると、効果と限界の両方が短時間で見える。

  1. 顧問先と同業の上場企業を3社選ぶ
  2. EDINETコードと決算日を引き、直近の有報の docID を特定する
  3. 主要な経営指標を取得し、いつもの手作業と突き合わせる
  4. 一致しない項目が、会計基準の違いによるものか取得側の問題かを切り分ける

4まで済ませて初めて、どの調査をこの設計に載せられるかが決まる。 なお書類検索と財務データの取得にはEDINETのAPIキーが要る。 金融庁のサイトで無料で取得できる。

この設計についての相談は受け付けている。 比較対象を3社選ぶところから話せる。

よくある質問

Q: AIが出した財務数値をそのまま顧問先への資料に載せてよいですか?

参照先をEDINETに固定した設計であっても、docID から原本を開いて確認する工程は残す。 数値が実在することと、その数値を並べた比較が成り立つことは別の話だからだ。 会計基準が異なる会社を並べた表は、数値が正しくても比較として誤る。

Q: 顧問先が非上場でも使えますか?

顧問先そのものの数字は取れない。 同業の上場企業を比較対象として並べ、顧問先の位置を測る使い方になる。

Q: 準備に何が要りますか?

企業の検索だけならAPIキーは要らない。 開示書類の検索と財務データの取得には、金融庁で無料のAPIキーを取得する。


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