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士業事務所の書類電子化 — 電子帳簿保存法の要件を満たす最小構成【2026年版】

2026-08-14by DO XUAN HIEN
士業事務所の書類電子化 — 電子帳簿保存法の要件を満たす最小構成【2026年版】

士業事務所の書類電子化は、「何を電子化すべきか」より先に「何が義務で何が任意か」を切り分けるところから始まります。 ここを曖昧にしたまま製品比較に入ると、義務でない部分に費用をかけ、義務である部分が手つかずのまま残ります。

この記事では、電子帳簿保存法の要件を国税庁の公式資料に沿って整理し、専用システムを入れずに満たす最小構成を示します。 記載内容は国税庁のパンフレットと特設サイトで2026年8月14日に確認したものです。制度は改正されるため、実務判断の際は必ず最新の公式情報をご確認ください。

義務は3つのうち1つだけ

電子帳簿保存法には3つの保存区分がありますが、対応が義務なのは電子取引データの保存だけです。

電子取引データの保存:義務。申告所得税と法人税に関して帳簿・書類を保存する義務がある方が、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子データをやりとりした場合、そのデータを保存しなければなりません。

電子帳簿等保存:任意。会計ソフトで作成した帳簿を、紙に出さずデータのまま保存する制度です。

スキャナ保存:任意。紙で受け取った書類をスキャンしてデータで保存する制度です。

この切り分けが実務上もっとも重要です。 「電子帳簿保存法への対応」という言葉から、事務所にある紙をすべてスキャンしなければならないと受け取られることがありますが、そうではありません。 国税庁のパンフレットは「あくまでデータでやりとりしたものが対象であり、紙でやりとりしたものをデータ化しなければならない訳ではありません」と明記しています。

対象となるのは、受け取ったデータだけではありません。送った側にも保存義務があります。 メールにPDFの請求書を添付して送った場合、その控えも保存の対象です。

保存するファイル形式は問われません。PDFに変換したものでも、画面のスクリーンショットでも構いません。

満たすべき要件は3つ

電子取引データを保存する際に満たす要件は、可視性の確保と真実性の確保に分かれます。

可視性の確保として、ディスプレイやプリンタ等を備え付けること、そして「日付・金額・取引先」で検索できることが求められます。 真実性の確保として、改ざん防止のための措置が求められます。

事務所で業務用のパソコンとプリンタを使っているなら、備付けの要件は実質的に満たされています。 残るのは検索と改ざん防止の2つです。

システムを入れずに満たす方法

改ざん防止

国税庁は、システム費用をかけずに導入できる方法として、改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る方法を挙げています。 規程のサンプルは国税庁のホームページで公開されているため、事務所の実態に合わせて調整すれば足ります。

このほかにタイムスタンプを付与する方法や、訂正・削除の履歴が残るシステムで授受・保存する方法もあります。 ただし、規程で対応できるなら、少人数の事務所がここに費用をかける必要はありません。

検索要件

専用システムがなくても、次のいずれかで対応できます。

索引簿を作る方法:表計算ソフトで日付・金額・取引先の索引簿を作り、表計算ソフトの検索機能で探せるようにします。索引簿のサンプルも国税庁が公開しています。

ファイル名に規則を持たせる方法:データのファイル名に日付・金額・取引先を規則的に入れ、特定のフォルダに集約します。フォルダの検索機能がそのまま検索要件を満たします。

後者は運用の手間が少なく、事務所規模を問わず現実的です。 命名規則を決めて全員が守れば、追加のソフトは要りません。

検索要件そのものが不要になる場合

次のいずれかに当てはまり、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件は不要です。

  • 2課税年度前の売上高が5,000万円以下である
  • 電子取引データをプリントアウトして、日付および取引先ごとに整理している

小規模な事務所の多くは前者に該当します。 その場合、実質的に必要なのは事務処理規程とデータの確実な保管だけになります。

準備が間に合わない場合の猶予措置

令和6年1月以降、次の2つを満たす場合は、電子取引データを保存しておくだけで足ります。

  1. 保存時の要件に従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合。事前申請は不要です。
  2. 税務調査等の際に、電子取引データやそれをプリントアウトした書面を提示・提出できるようにしている場合。

なお、令和4年度税制改正で措置された宥恕措置は、適用期限である令和5年12月31日をもって廃止されています。 猶予措置はこれとは別の制度です。

猶予措置があっても、データを消してよいことにはなりません。 電子取引データが原本であり、プリントアウトした後もデータを残しておく必要があります。 以前の運用のまま、印刷後にメールやデータを削除していると、猶予措置でも対応できない状態になります。

事務所規模別の現実解

1人から3人の事務所:事務処理規程とファイル命名規則で足ります。売上高の要件に該当すれば検索要件も不要です。新たなソフトは導入せず、共有フォルダの構成を決めることに時間を使うほうが効果があります。

5人から20人の事務所:命名規則が守られなくなる規模です。ルールを決めるだけでなく、保存漏れを検知する仕組みが要ります。受信メールの添付ファイルを自動で指定フォルダに振り分ける、月次で未整理のファイルを一覧化するといった自動化が効きます。

20人以上の事務所:文書管理システムの導入を検討する段階です。ただし、導入しても運用ルールがなければ同じ問題が起きます。先にルールを固め、それを実装できる製品を選ぶ順序が安全です。

顧問先への説明で使える切り分け

顧問先から「電子帳簿保存法への対応で何を買えばいいか」と聞かれたとき、次の順で確認すると話が早く進みます。

  1. データでやりとりしている書類は何か。ここだけが義務の範囲です。
  2. そのデータを、印刷後に消していないか。消しているなら、まずそこを止めます。
  3. 2課税年度前の売上高が5,000万円以下か。該当すれば検索要件は不要です。
  4. 改ざん防止は事務処理規程で対応するか、システムで対応するか。

この4点で、多くの事業者は製品を買わずに要件を満たせることがわかります。 そのうえで、業務効率化のために何を入れるかは、法対応とは別の判断として整理できます。

法対応と業務効率化は別の問題

電子帳簿保存法への対応は、済ませても事務所の生産性は上がりません。 保存が義務化されただけで、業務の流れは変わらないためです。

生産性が上がるのは、電子化したデータを前提に業務を組み直したときです。 請求書のデータが決まった形式で決まった場所に集まるようになれば、会計ソフトへの取り込み、顧問先ごとの集計、期日管理までを自動化できます。 法対応で整えた保存の仕組みは、その土台になります。

順序としては、まず義務の範囲を最小の構成で満たし、運用が回ることを確認してから、自動化に進むのが安全です。 最初から大きな仕組みを入れると、法対応も自動化も中途半端なまま止まります。

参考にした公式資料

  • 国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト
  • 国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください」(令和5年7月)
  • 国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」(令和5年12月)

いずれも2026年8月14日に確認しました。制度の内容と要件は改正により変わるため、実務判断の際は国税庁の最新の公表資料をご確認ください。

電子化の設計からご相談ください

Kanau Tech™は、士業事務所の書類電子化を、法対応と業務効率化の両面から支援しています。 どこまでが義務で、どこからが効率化の投資かを切り分けたうえで、事務所の規模に合った最小の構成をご提案します。

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