n8nを自社サーバーで無料で使う — ライセンスの範囲と、月いくらかかるか

無料なのはソフトウェア、有料なのは置き場所
n8nをクラウド版ではなく自社のサーバーで動かすと、ソフトウェアの利用料はかからない。 ここで無料になるのはソフトウェアだけで、サーバー代と運用の手間は自社に残る。
この記事では、支援先のn8nサーバーを構築し、負荷不足で作り直した実務から、次の4点を書く。 ライセンスで許される範囲、無料版に入っていない機能、東京リージョンでの月額、そしてメモリ1GBでは足りなかった経緯である。
ライセンスで許されていること
n8nのライセンスは Sustainable Use License Version 1.0 である。 条文では、自社の内部業務目的(your own internal business purposes)または非商用・個人利用のために、使用・複製・配布・派生物の作成が認められている[1]。
禁止されているのは次の行為である。 有償での配布や販売、権利の再許諾や譲渡、ライセンス表記や著作権表記の削除や改変である[1]。 つまり「自社の業務を自動化する」用途は無償の範囲に入り、「n8nを他社に提供して課金する」用途は入らない。
ファイル名やディレクトリに .ee. を含むエンタープライズ版のファイルは、別のライセンス(LICENSE_EE.md)の対象になる[1]。
無料版に入っていない機能
n8n自身が、セルフホストの無料版と有料プランの境界を公開している[2]。 無料版はほぼ全機能を含むが、次のものは対象外である。
| 区分 | 対象外の機能 |
|---|---|
| 無料の登録が必要 | Folders、Debug in editor、Custom execution data |
| 有料プラン(Business / Enterprise) | SSO(SAML、LDAP)、Environments、Projects、External secrets、バイナリデータの外部ストレージ、Log streaming、Multi-main mode、Custom variables、ワークフローと認証情報の共有、Gitによるバージョン管理 |
見落としやすいのは認証の扱いである。 SSOが有料なので、無料の範囲で社内に閉じるには、サーバーの前段で認証をかけるか、ネットワークで絞ることになる。 なお、ログの記録自体とキューモードは無料版に含まれる[2]。
n8nの公式ドキュメントは、セルフホストについて「インフラは自分で用意して管理する」「メンテナンスは自分の責任」「インストールと設定には技術的な知識が必要」と明記している[3]。
自社サーバーに置くと何が変わるか
料金の形と、データの置き場所が変わる。
クラウド版(n8n Cloud)は、月あたりのワークフロー実行回数で区切られている[4]。
| プラン | 月額(年払い) | 月の実行回数 |
|---|---|---|
| Starter | 20ユーロ | 2,500回 |
| Pro | 50ユーロ | 10,000回 |
| Business | 667ユーロ | 40,000回 |
超えた分は買い足す形になる(Businessでは30万回の追加が4,000ユーロ)[4]。 自社サーバーに置く場合、公開されている料金表に実行回数の上限は示されていない[4]。 上限になるのはサーバーの処理能力で、足りなければサイズを上げる判断に変わる。
もうひとつは、処理するデータと認証情報の置き場所である。 自社のサーバーで動かせば、顧客の個人情報を含む処理を外部のサービスに預けずに回せる。 社内システムやファイルサーバーに直接つなぐ構成も取れる。
ただし、守る責任も同時に自社へ来る。 アクセス制限、バックアップ、ログの保管、更新の適用は自社の仕事になる[3]。 個人情報を扱うなら、置き場所を自社にしたうえで、安全管理の手当てまでを設計に含める必要がある。
判断の目安はこうなる。 実行回数が増える見込みがある、または扱うデータを外に出したくない場合は自社基盤が向く。 運用に人を割けない場合はクラウド版が向く。
構成は2つに絞れる
小さく始める構成と、認証を前段に置く構成の2つで足りる。 どちらもEC2上でn8nを動かし、CloudFormationのテンプレート1本で作れる形にしてある。
| 観点 | EC2 + Caddy | EC2 + ALB + Cognito |
|---|---|---|
| HTTPS | Caddyが Let's Encrypt の証明書を自動で取得・更新 | ACMの証明書をALBに付ける |
| 認証 | n8nのBasic認証 | ALBの前段でCognitoに認証させる |
| 向く場面 | 使う人が数人。まず動かして試したい | 社内の複数部署。認証をn8nの外に出したい |
| 増えるコスト | なし(EC2とEBSだけ) | ALBの時間課金とデータ処理料 |
Caddyを選ぶ理由は、証明書の更新を人が忘れても止まらないことである。 ALBとCognitoを選ぶ理由は、n8nの画面に着く前に認証を終えられることである。
月いくらかかるか
東京リージョン(ap-northeast-1)のオンデマンド料金で試算した。 以下は2026年8月時点の試算で、$1=150円で換算している。EBSなどのストレージ料金は別に数ドルかかる。
| 構成 | メモリ | 月額(オンデマンド) | Savings Plan 1年適用 |
|---|---|---|---|
| t3.micro | 1GB | 約1,500円($9.9) | — |
| t3.medium | 4GB | 約6,000円($39.71) | 約3,800円($25.04) |
Savings Planを1年で確約すると、t3.mediumの費用は約37%下がる。 ただし最初の1か月はオンデマンドで動かし、稼働が安定してから購入を判断するほうが安全である。 小さく試す段では、EC2とEBSだけのCaddy構成が月14ドル前後(約2,100円)で収まる。
メモリ1GBでは足りなかった
最初はt3.micro(メモリ1GB)で構築した。 テキストの受け渡しだけなら問題なく動いた。
止まったのは、画像を扱うワークフローを足したときである。 実行中のメモリ使用率が常時90%を超え、処理がタイムアウトするようになった。
原因の切り分けは、推測ではなく2つの実測で行った。 CloudWatchでCPU使用率・ネットワーク量・T系インスタンスのCPUクレジット残高を24時間分取り、コンテナのログを1週間分落としてエラーと再起動の痕跡を数えた。
t3.medium(メモリ4GB)へ上げたあとの使用量は905MB(空き2.6GB)で、画像処理も通るようになった。
| 指標 | 変更前(1GB) | 変更後(4GB) |
|---|---|---|
| メモリ | 常時90%超 | 905MB使用、空き2.6GB |
| 画像処理 | メモリ不足でタイムアウト | 正常に完了 |
教訓は単純である。 OCRや画像の変換を載せるなら、最初から4GBを見ておくほうが安い。 1GBで始めて詰まると、切り分けとアップグレードの作業時間が、差額の数千円をすぐに超える。
上げる作業で実際にやったこと
インスタンスタイプの変更は、手順を踏めば短時間で終わる。
- 変更前にAMIを取得する。日付入りの名前で、再起動なしのオプションを使う。
- CloudFormationのテンプレートのインスタンスタイプを書き換え、検証してからスタックを更新する。
- 更新中にEC2が停止して再起動する。停止時間は5〜10分だった。
- あわせてn8n本体のバージョンも上げる。
- 不要なイメージとログを掃除する。このとき1.884GBを回収できた。
バックアップを先に取る理由は、失敗したときに戻す先を用意するためである。 作業を始める前に、戻し方を決めておく。
運用で見るのは3つだけ
毎日眺める必要はない。週に一度、次の3つを見れば足りる。
- メモリ使用量。空きが1GBを切ったら、載せたワークフローを見直すか、上げる。
- T系インスタンスのCPUクレジット残高。減り続けるなら、常時負荷に対してタイプが小さい。
- コンテナのログのエラー件数と再起動の痕跡。件数が増えたら、直前に足したワークフローを疑う。
無料で済まないもの
セルフホストで無料になるのはソフトウェアの利用料だけである。 残るものを正直に書いておく。
- サーバー代。上の表のとおり、月2,000円から6,000円程度である。
- 責任。更新、バックアップ、障害時の復旧は自社の仕事になる[3]。
- 有料機能。SSOやEnvironments、Git連携が必要になった時点で、プランの購入が要る[2]。
- 運用の手間。週次の確認と、バージョンを上げる判断が続く。
- 実行回数が少ないうちは、クラウド版のほうが安く済む場合がある。月2,500回で足りるなら20ユーロである[4]。
自社で回せるならセルフホストは安い。 回す人がいないなら、クラウド版の料金は「運用を外に出す費用」だと考えたほうが実態に合う。
まとめ
n8nのセルフホストは、社内の業務を自動化する用途なら無償の範囲に入る。 費用はサーバー代だけで、小さく始めれば月2,000円程度、画像処理を載せるなら4GBで月6,000円程度を見ておく。
構築でつまずくのは、ライセンスではなく置き場所の設計である。 HTTPSと認証をどう置くか、どのサイズから始めるか、上げるときにどう止めるかを先に決めておけば、あとは手順の作業になる。
出典
[1] n8n, "Sustainable Use License" Version 1.0, n8n-io/n8n リポジトリ LICENSE.md, https://github.com/n8n-io/n8n/blob/master/LICENSE.md (2026年9月11日閲覧)
[2] n8n Docs, "Compare plans and editions"(セルフホストの無料版と有料プランの機能差), https://docs.n8n.io/deploy/host-n8n/community-edition-features/ (2026年9月11日閲覧)
[3] n8n Docs, "Choose how to use n8n"(セルフホストの責任範囲), https://docs.n8n.io/choose-how-to-use-n8n/ (2026年9月11日閲覧)
[4] n8n, "Pricing"(クラウド版プランの月間実行回数と超過分の価格、セルフホスト版の記載), https://n8n.io/pricing/ (2026年9月11日閲覧)
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