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業務自動化

n8nを自社サーバーで無料で使う — ライセンスの範囲と、月いくらかかるか

2026-09-11
n8nを自社サーバーで無料で使う — ライセンスの範囲と、月いくらかかるか

無料なのはソフトウェア、有料なのは置き場所

n8nをクラウド版ではなく自社のサーバーで動かすと、ソフトウェアの利用料はかからない。 ここで無料になるのはソフトウェアだけで、サーバー代と運用の手間は自社に残る。

この記事では、支援先のn8nサーバーを構築し、負荷不足で作り直した実務から、次の4点を書く。 ライセンスで許される範囲、無料版に入っていない機能、東京リージョンでの月額、そしてメモリ1GBでは足りなかった経緯である。

ライセンスで許されていること

n8nのライセンスは Sustainable Use License Version 1.0 である。 条文では、自社の内部業務目的(your own internal business purposes)または非商用・個人利用のために、使用・複製・配布・派生物の作成が認められている[1]

禁止されているのは次の行為である。 有償での配布や販売、権利の再許諾や譲渡、ライセンス表記や著作権表記の削除や改変である[1]。 つまり「自社の業務を自動化する」用途は無償の範囲に入り、「n8nを他社に提供して課金する」用途は入らない。

ファイル名やディレクトリに .ee. を含むエンタープライズ版のファイルは、別のライセンス(LICENSE_EE.md)の対象になる[1]

無料版に入っていない機能

n8n自身が、セルフホストの無料版と有料プランの境界を公開している[2]。 無料版はほぼ全機能を含むが、次のものは対象外である。

区分対象外の機能
無料の登録が必要Folders、Debug in editor、Custom execution data
有料プラン(Business / Enterprise)SSO(SAML、LDAP)、Environments、Projects、External secrets、バイナリデータの外部ストレージ、Log streaming、Multi-main mode、Custom variables、ワークフローと認証情報の共有、Gitによるバージョン管理

見落としやすいのは認証の扱いである。 SSOが有料なので、無料の範囲で社内に閉じるには、サーバーの前段で認証をかけるか、ネットワークで絞ることになる。 なお、ログの記録自体とキューモードは無料版に含まれる[2]

n8nの公式ドキュメントは、セルフホストについて「インフラは自分で用意して管理する」「メンテナンスは自分の責任」「インストールと設定には技術的な知識が必要」と明記している[3]

自社サーバーに置くと何が変わるか

料金の形と、データの置き場所が変わる。

クラウド版(n8n Cloud)は、月あたりのワークフロー実行回数で区切られている[4]

プラン月額(年払い)月の実行回数
Starter20ユーロ2,500回
Pro50ユーロ10,000回
Business667ユーロ40,000回

超えた分は買い足す形になる(Businessでは30万回の追加が4,000ユーロ)[4]。 自社サーバーに置く場合、公開されている料金表に実行回数の上限は示されていない[4]。 上限になるのはサーバーの処理能力で、足りなければサイズを上げる判断に変わる。

もうひとつは、処理するデータと認証情報の置き場所である。 自社のサーバーで動かせば、顧客の個人情報を含む処理を外部のサービスに預けずに回せる。 社内システムやファイルサーバーに直接つなぐ構成も取れる。

ただし、守る責任も同時に自社へ来る。 アクセス制限、バックアップ、ログの保管、更新の適用は自社の仕事になる[3]。 個人情報を扱うなら、置き場所を自社にしたうえで、安全管理の手当てまでを設計に含める必要がある。

判断の目安はこうなる。 実行回数が増える見込みがある、または扱うデータを外に出したくない場合は自社基盤が向く。 運用に人を割けない場合はクラウド版が向く。

構成は2つに絞れる

小さく始める構成と、認証を前段に置く構成の2つで足りる。 どちらもEC2上でn8nを動かし、CloudFormationのテンプレート1本で作れる形にしてある。

観点EC2 + CaddyEC2 + ALB + Cognito
HTTPSCaddyが Let's Encrypt の証明書を自動で取得・更新ACMの証明書をALBに付ける
認証n8nのBasic認証ALBの前段でCognitoに認証させる
向く場面使う人が数人。まず動かして試したい社内の複数部署。認証をn8nの外に出したい
増えるコストなし(EC2とEBSだけ)ALBの時間課金とデータ処理料

Caddyを選ぶ理由は、証明書の更新を人が忘れても止まらないことである。 ALBとCognitoを選ぶ理由は、n8nの画面に着く前に認証を終えられることである。

月いくらかかるか

東京リージョン(ap-northeast-1)のオンデマンド料金で試算した。 以下は2026年8月時点の試算で、$1=150円で換算している。EBSなどのストレージ料金は別に数ドルかかる。

構成メモリ月額(オンデマンド)Savings Plan 1年適用
t3.micro1GB約1,500円($9.9)
t3.medium4GB約6,000円($39.71)約3,800円($25.04)

Savings Planを1年で確約すると、t3.mediumの費用は約37%下がる。 ただし最初の1か月はオンデマンドで動かし、稼働が安定してから購入を判断するほうが安全である。 小さく試す段では、EC2とEBSだけのCaddy構成が月14ドル前後(約2,100円)で収まる。

メモリ1GBでは足りなかった

最初はt3.micro(メモリ1GB)で構築した。 テキストの受け渡しだけなら問題なく動いた。

止まったのは、画像を扱うワークフローを足したときである。 実行中のメモリ使用率が常時90%を超え、処理がタイムアウトするようになった。

原因の切り分けは、推測ではなく2つの実測で行った。 CloudWatchでCPU使用率・ネットワーク量・T系インスタンスのCPUクレジット残高を24時間分取り、コンテナのログを1週間分落としてエラーと再起動の痕跡を数えた。

t3.medium(メモリ4GB)へ上げたあとの使用量は905MB(空き2.6GB)で、画像処理も通るようになった。

指標変更前(1GB)変更後(4GB)
メモリ常時90%超905MB使用、空き2.6GB
画像処理メモリ不足でタイムアウト正常に完了

教訓は単純である。 OCRや画像の変換を載せるなら、最初から4GBを見ておくほうが安い。 1GBで始めて詰まると、切り分けとアップグレードの作業時間が、差額の数千円をすぐに超える。

上げる作業で実際にやったこと

インスタンスタイプの変更は、手順を踏めば短時間で終わる。

  1. 変更前にAMIを取得する。日付入りの名前で、再起動なしのオプションを使う。
  2. CloudFormationのテンプレートのインスタンスタイプを書き換え、検証してからスタックを更新する。
  3. 更新中にEC2が停止して再起動する。停止時間は5〜10分だった。
  4. あわせてn8n本体のバージョンも上げる。
  5. 不要なイメージとログを掃除する。このとき1.884GBを回収できた。

バックアップを先に取る理由は、失敗したときに戻す先を用意するためである。 作業を始める前に、戻し方を決めておく。

運用で見るのは3つだけ

毎日眺める必要はない。週に一度、次の3つを見れば足りる。

  • メモリ使用量。空きが1GBを切ったら、載せたワークフローを見直すか、上げる。
  • T系インスタンスのCPUクレジット残高。減り続けるなら、常時負荷に対してタイプが小さい。
  • コンテナのログのエラー件数と再起動の痕跡。件数が増えたら、直前に足したワークフローを疑う。

無料で済まないもの

セルフホストで無料になるのはソフトウェアの利用料だけである。 残るものを正直に書いておく。

  • サーバー代。上の表のとおり、月2,000円から6,000円程度である。
  • 責任。更新、バックアップ、障害時の復旧は自社の仕事になる[3]
  • 有料機能。SSOやEnvironments、Git連携が必要になった時点で、プランの購入が要る[2]
  • 運用の手間。週次の確認と、バージョンを上げる判断が続く。
  • 実行回数が少ないうちは、クラウド版のほうが安く済む場合がある。月2,500回で足りるなら20ユーロである[4]

自社で回せるならセルフホストは安い。 回す人がいないなら、クラウド版の料金は「運用を外に出す費用」だと考えたほうが実態に合う。

まとめ

n8nのセルフホストは、社内の業務を自動化する用途なら無償の範囲に入る。 費用はサーバー代だけで、小さく始めれば月2,000円程度、画像処理を載せるなら4GBで月6,000円程度を見ておく。

構築でつまずくのは、ライセンスではなく置き場所の設計である。 HTTPSと認証をどう置くか、どのサイズから始めるか、上げるときにどう止めるかを先に決めておけば、あとは手順の作業になる。


出典

[1] n8n, "Sustainable Use License" Version 1.0, n8n-io/n8n リポジトリ LICENSE.md, https://github.com/n8n-io/n8n/blob/master/LICENSE.md (2026年9月11日閲覧)

[2] n8n Docs, "Compare plans and editions"(セルフホストの無料版と有料プランの機能差), https://docs.n8n.io/deploy/host-n8n/community-edition-features/ (2026年9月11日閲覧)

[3] n8n Docs, "Choose how to use n8n"(セルフホストの責任範囲), https://docs.n8n.io/choose-how-to-use-n8n/ (2026年9月11日閲覧)

[4] n8n, "Pricing"(クラウド版プランの月間実行回数と超過分の価格、セルフホスト版の記載), https://n8n.io/pricing/ (2026年9月11日閲覧)


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