メインコンテンツへスキップ
Kanau Techかなうテック
← ブログ一覧に戻る
DX

中小企業のDXは「未着手」ではなく「効果が出ない」で止まる — 生成AIで埋められる部分

2026-09-11
中小企業のDXは「未着手」ではなく「効果が出ない」で止まる — 生成AIで埋められる部分

止まっているのは入口ではない

中小企業のDXは、着手していないから進まないのではない。 入れたのに効果が出ていないところで止まっている。

2025年版中小企業白書は、デジタル化の取組段階を4区分で示している[1][2]

段階白書の定義割合(2024年)
段階1紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態12.5%
段階2アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態52.3%
段階3デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態32.0%
段階4デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態3.2%

未着手の段階1は12.5%である(n=24,588)[1]。 2023年の同じ区分では30.8%だったが、白書は「調査間で母集団が異なるため、回答割合を一概には比較できない」と注記している[2]。 下がったと断定はせず、いま未着手が少数派であることだけを読む。 最も多いのは、ツールを使っている段階2の52.3%である。

段階2の内側を見ると、話が変わる。 段階2の企業に売上面の効果を尋ねると、効果を感じていないという回答が64.0%を占める(あまり感じていない48.8%+ほとんど感じていない15.2%、n=10,674)[3]。 効果を感じているは36.1%である。

つまり、最も多い層の3社に2社近くが、入れたのに売上では効いていないと感じている。 全体に対する比率でいえば3割強である(52.3%の64.0%、単純計算)。 ここが実際の停滞点である。

何が止めているか

白書は、DXに向けた取組を進めるに当たっての問題点も段階別に集計している[4]。 段階2の企業の回答は次のとおりである(複数回答、n=12,500)。

問題点段階2の割合
DXを推進する人材が足りない51.2%
費用の負担が大きい44.7%
具体的な効果や成果が見えない23.1%
どのように推進すればよいか分からない21.3%

人材と費用が上位に来るのは、段階1から段階4まで共通している[4]。 段階が上がるにつれて下がるのは「どのように推進すればよいか分からない」で、段階1の21.0%から段階4の4.2%まで落ちる[4]

読み方はこうなる。 止めているのは技術ではなく、進め方を決める人の不在である。 人を採れず、外に出す費用も抑えたい。そこで手が止まる。

生成AIが埋めているのは「人手の一部」

ここに生成AIが入る余地がある。 DXの遅れを生成AIで埋める動きは、AX(AI Transformation)と呼ばれることもある。 呼び方は本題ではない。見るのは、どこが埋まってどこが残るかである。

帝国データバンクの2026年3月の調査では、生成AIを業務で活用している企業は全体で34.5%だった(有効回答10,312社、うち中小企業8,773社)[5]

規模活用している割合
大企業46.5%
中小企業32.4%
小規模企業28.0%

効果の実感は、規模が小さいほうが高い。 活用している企業のうち、効果ありと答えたのは中小企業で87.4%、小規模企業で88.4%だった(大いに出ている+やや出ている、活用企業3,560社)[5]

何に使っているかも公開されている[5]

業務全体中小企業小規模企業
文章の作成・要約・校正45.1%47.8%41.7%
情報収集21.8%25.2%
企画立案時のアイデア出し11.0%

—は、公表資料に規模別の記載がない項目である。

上位は文章と調べもので、どちらも人手が要るのに売上に直結しない作業である。 段階2で止まっている理由が人手の不足なら、埋まるのはまずこの部分になる。

なお、同じ調査主体の2024年6〜7月時点の活用率は17.3%だった[6]。 ただし2024年はインターネット調査(有効回答4,705社)、2026年は景気動向調査と同時実施(同10,312社)で、調査方法が異なる。 倍になったと断定はできない。参考値として見るのが妥当である。

埋まらない部分を先に決める

生成AIで全部が埋まるわけではない。 同じ調査が、活用に関する懸念も集計している(3つまでの複数回答、n=10,312)[5]

懸念全体中小企業
情報の正確性50.4%49.7%
専門人材・ノウハウの不足41.3%40.4%
生成AIを活用すべき業務の範囲40.0%39.5%
情報漏洩のリスク33.5%32.1%

小規模企業では、システム導入への資金不足が13.6%と相対的に高い[5]

そしてもう1つ。 総務省の令和7年版情報通信白書によれば、生成AIの活用方針を定めている企業の比率は2023年度の42.7%から2024年度の49.7%へ上がったが、中小企業では方針を明確に定めていないという回答が約半数を占める[7]

懸念の1位が正確性で、3位が使う範囲、そして方針が決まっていない。 この3つは同じことを別の角度から言っている。 どこまで任せ、どこから人が確かめるかが決まっていない。

段階2から動かす順番

以下はKanau Tech™の実務での進め方であり、公的統計ではない。

  1. 業務を1つに絞る。生成AIの用途で最も多いのは文章の作成・要約・校正である[5]。まずそこから選ぶ。
  2. 任せる範囲と、人が確かめる箇所を先に紙に書く。懸念の1位は正確性である。確かめる人を決めないまま載せると、確認の手間が増えて元の作業より遅くなる。
  3. 個人情報を含む処理は、置き場所を決めてから載せる。外部のサービスに通さない形にできるかを先に見る。
  4. 効果は作業時間で測る。売上で測ると段階2と同じ結論になる。まず時間が空いたかを見て、空いた時間の使い道を決める。

順番を逆にすると、ツールが増えて効果が見えない状態に戻る。 段階2の効果実感が伸びない理由を、白書は1つに特定していない。 ただ、進め方が分からないという回答が21.3%あることは、順番の問題を示している[4]

使わない数字

この記事では、次の数字を使っていない。 調べた結果、一次資料に到達できなかったためである。

  • 「中小企業のDX失敗率は70〜80%」「成功率は2割」。複数の記事で流通しているが、調査主体・調査年・回答数が明記された報告書に辿れなかった。白書の実数(未着手は2024年で12.5%)とも噛み合わない。
  • 「2025年の崖で年間最大12兆円の経済損失」。経済産業省のDXレポート(2018年)は実在し数値も本物だが、2018年時点の将来推計である。現状の数字として引用すると誤解を招く。

数字が多いほど説得力が上がるわけではない。 出典に辿れない数字を1つ混ぜると、残りの数字も疑われる。

まとめ

中小企業のDXが止まっているのは入口ではない。 ツールは入っている段階2に52.3%が滞留し、その64.0%が売上への効果を感じていない[1][3]。 上位に来るのは人材と費用で、進め方が分からないという回答も21.3%ある[4]

生成AIが埋めるのは、その人手の一部である。 活用している中小企業の87.4%が効果を感じており、使われているのは文章と調べものである[5]。 一方で正確性と使う範囲の不安は残り、方針を決めていない中小企業が約半数ある[7]

先に決めるのは、任せる範囲と確かめる人である。 そこが決まっていれば、1業務から動かせる。


出典

[1] 中小企業庁「2025年版中小企業白書」第1部第1章第5節 第1-1-41図(デジタル化の取組段階。2024年 n=24,588、原データは帝国データバンク「令和6年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」2024年11〜12月/2023年 n=5,309、同「中小企業が直面する外部環境の変化に関する調査」2023年11〜12月), https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_5.html (2026年9月11日閲覧)

[2] 中小企業庁事業環境部調査室「2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2025年5月14日、RIETI BBLセミナー配布資料)図1 デジタル化の取組段階。段階1〜4の定義文と母集団に関する注記の出所, https://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/25051401_okada.pdf (2026年9月11日閲覧)

[3] 同白書 第1-1-43図(デジタル化の取組の効果・売上面、段階別。段階2 n=10,674), https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/excel/b1_1_43.xlsx (2026年9月11日閲覧)

[4] 同白書 第1-1-45図(DXに向けた取組を進めるに当たっての問題点、段階別。段階1 n=2,978/段階2 n=12,500/段階3 n=7,644/段階4 n=753), https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/excel/b1_1_45.xlsx (2026年9月11日閲覧)

[5] 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」(2026年3月、調査期間3月17日〜31日。対象23,349社・有効回答10,312社。規模別の内訳は同調査PDFの図表2・3・5), https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260514-genai/ (2026年9月11日閲覧)

[6] 帝国データバンク「生成AIの活用に関する企業アンケート」(2024年8月1日公表、調査期間2024年6月14日〜7月5日、有効回答4,705社), https://www.tdb.co.jp/resource/files/assets/d4b8e8ee91d1489c9a2abd23a4bb5219/ed8435fc5bfc428c807c0568f5ecf53a/p240802.pdf (2026年9月11日閲覧)

[7] 総務省「令和7年版情報通信白書」企業におけるAI利用の現状(図表Ⅰ-1-2-12、Ⅰ-1-2-13), https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112220.html (2026年9月11日閲覧)


関連記事

御社のDX力、3分でチェックしませんか

10問の質問で、IT基盤・業務デジタル化・AI活用度を診断します。改善のヒントもその場で分かります。