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AI導入

2026年版中小企業白書が示すAX。AIを使わない理由の1位「業務がイメージできない」63.4%にどう答えるか

2026-09-08
2026年版中小企業白書が示すAX。AIを使わない理由の1位「業務がイメージできない」63.4%にどう答えるか

この記事の概要

項目内容
一次資料中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(PDF、51ページ)と、同調査室のセミナー資料(2026年6月11日)
対象読者AIを入れたいが、どの業務から始めるか決めかねている中小企業の経営者と管理者
この記事で分かること白書が示す「稼ぐ力」の2つの方向、AI活用の実態を示す数字、最初の1業務の選び方
確認日2026年9月8日

白書2026のメッセージ

2026年版の中小企業白書は、冒頭のメッセージで「現状維持は最大のリスク」と述べています。 背景にあるのは、賃上げの継続と人手不足の同時進行です。 2025年の春季労使交渉では中小の労働組合で4.65%の賃上げ率となり、最低賃金は全都道府県で1,000円を超えました。 一方で、中小企業の労働分配率は既に8割に近い水準にあり、賃上げの原資を確保するには労働生産性を高めるしかない、というのが白書の立場です。

白書はその取組を2つに分けています。 一つは付加価値額の増加で、成長投資、研究開発と人材育成、価格転嫁、事業承継とM&Aが並びます。 もう一つは労働投入量の最適化で、省力化投資と、AI活用やデジタル化がここに入ります。 本記事が扱うのは後者です。

AI活用の実態を示す数字

白書は帝国データバンクの令和7年度調査を引用し、AI活用の状況を図で示しています。 2019年以降に省力化投資を行った事業者のうち、AI活用に「取り組んだ」のは30.3%でした。 取り組んだ事業者を部門別に見ると、バックオフィス部門で「活用している」が73.4%、営業・販売・顧客対応部門で68.2%、製造・生産管理・物流部門で57.2%です。 最初にAIが入るのは事務の領域だ、という読み方ができます。

数字として重いのは、活用していない理由のほうです。

活用していない理由(複数回答、n=3,888)割合
活用する業務がイメージできていない63.4%
活用を推進する人材が不足している40.0%
社内ルール・ガイドラインが整備されていない26.2%
セキュリティ・情報漏えいへの不安がある14.5%
必要な予算を確保できない13.8%

予算の不足は最下位です。 AIが進まない一番の理由は、お金でも技術でもなく、「自分の会社のどの仕事に使えばよいか」が見えていないことにあります。

なお、この設問は省力化投資に取り組んだ事業者に対するもので、中小企業全体の導入率を示す数字ではありません。 投資に前向きな層でさえ7割が未着手で、その6割が業務を思い描けていない、と読むのが正確です。

AXに取り組む企業と、そうでない企業の差

白書は「成長に向けたAI活用」に取り組んでいる企業と、そうでない企業を、付加価値額の増加率で比べています。 2019年から2024年の増加率の中央値は、取り組んだ企業(n=2,618)が23.0%、取り組んでいない企業(n=9,089)が17.9%でした。 白書はこの差を根拠に、地域に根ざし現場に近い中小企業にとって、AX(AIトランスフォーメーション)は人手不足を乗り越えて大企業を追い抜くほどの成長の機会になる、と述べています。

ここでいう「成長に向けたAI活用」は、売上を増やすために、従来は自社だけではできなかった業務や十分でなかった業務にAIを使うことを指します。 概念図には、経営者と現場の力を補う「AI部下」という語も置かれています。 AIを事務の省力化にとどめず、人の判断を補う役に育てる、という方向が政策の側からも示されました。

属人化を防ぐ取組の効果

もう一つ、小規模企業白書の側に見落とせない数字があります。 社内のノウハウを蓄積して共有する取組の効果として、最も多かった回答は「担当者不在時でも業務が滞りなく遂行できるようになった」の43.6%でした。 次いで「業務の引継ぎが円滑に行えるようになった」31.9%、「製品・商品・サービスの品質が安定した」31.2%と続きます。

有効だった取組の1位は「マニュアルや手順書の整備」39.1%です。 つまり、判断の手順を言葉にして残すこと自体が、担当者が休んでも回る会社を作っています。 AIを入れる前に手順を言葉にする作業は、AIのためではなく、まず会社のためになります。

「業務がイメージできない」への処方

63.4%の壁を越えるには、業務の候補をAIの機能から探さないことです。 「文字起こしができる」「要約ができる」から入ると、使い道は思いつくものの、月に一度も使わない機能で終わります。

Kanau Tech™では、最初の1業務を次の3つの条件で選ぶことを勧めています。

  • 毎月、必ず発生する業務であること
  • 判断の基準を、担当者がルールとして口で説明できること
  • 最後に人の確認が入ることが、法令や取引上、当然とされていること

この3つを満たす業務は、事務の中に必ずあります。 請求書の作成と確認、入金の照合と催促の下書き、勤怠データからの手当の計算、届出書類の下書きなどです。

選んだ業務は、次の順に分解します。

  1. 受け取る(データや書類が届く)
  2. 読み取る(必要な項目を取り出す)
  3. 判断する(ルールに当てはめ、例外を見つける)
  4. 人が承認する(金額や個人情報に関わる判断は人が確定する)
  5. 記録する(何を誰が承認したかを残す)

この分解を紙に書いた時点で、「業務がイメージできない」状態は終わります。 AIに任せるのは2と3、人に残すのは4です。 5があるので、担当者が変わっても手順が残ります。 白書が示した「担当者不在でも業務が滞らない」効果は、この5の記録から生まれます。

効果を測る仕組みを先に決める

白書は支援機関側の課題も調べています。 支援機関が抱える課題の上位は「支援ノウハウ・知見の蓄積」49.8%、「支援を担当する人材の確保」42.2%に続き、「支援による効果の測定」が35.4%でした。 支援する側でさえ、効果を測れていないのが実情です。

AIの導入でも同じことが起きます。 最初の1業務を選んだら、着手前に「今この業務に月何時間かかっているか」「月に何件、誤りや手戻りが出ているか」を数えてください。 数字が無いまま入れると、効いたかどうかを誰も言えなくなります。 白書の言葉を借りれば、効果測定は支援側の課題であると同時に、導入する会社自身の課題でもあります。

出典

  • 中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(PDF) https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2026/PDF/2026gaiyou.pdf
  • 中小企業庁調査室「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」RIETI BBLセミナー資料(2026年6月11日)
  • 白書内で引用されている調査:帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」、デロイト トーマツ「令和7年度小規模事業者の経営課題と事業活動に関する調査」

いずれも2026年9月8日に確認しました。図中の数値は概要PDFの該当ページ(AXは15ページ、AI活用は21ページ、ノウハウ共有は30ページ、企業間連携は34ページ、支援機関は36ページ)を目視で確認しています。

最初の1業務の選定からご相談ください

Kanau Tech™では、中小企業の事務業務を上の5つの順に分解し、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を切り分けたうえで、導入前後の時間と件数を測る形でご支援しています。 どの業務から始めるかを決めかねている段階でも、現在の業務の棚卸しからお手伝いします。

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